日々の覚え書き~観劇、本、その他彩りのあるもの~

アラサー女の生きる糧。生きてるって楽しい!と思えた物事の個人的な記録。

リチャード2世を、観劇。

さてさて、浦井健治さん推しである当方。

 

現在、新国立劇場で行われている、リチャード2世、観劇してまいりました。

 

まず、ざっくりとおさらい。

シェイクスピアの、王位継承に関するゴタゴタシリーズは複数あります。

 

歴史より、古い順に並べると、

リチャード二世⇒ヘンリー四世⇒ヘンリー五世⇒ヘンリー六世⇒リチャード三世

 

です。

数字と、リチャード、ヘンリーが混ざるので私も混乱しました。

 

本のほうは、リチャード二世、三世、ヘンリー四世 と読了しましたのであと2冊で制覇・・・

 

とりあえず、簡単に説明すると、スタートはエドワード三世という王様。

その長男の息子=リチャード二世。

その従弟、エドワード三世の次男の息子=ボリングブルックとの王位争い

(というか、リチャード二世は比較的平和な攘夷)

 

ここから、ボリングブルック=ヘンリー四世、その息子、ハル王子の物語(=ヘンリー五世)、六世と続く。

 

その後のリチャード三世とは、、エドワード三世の、三男のひ孫にあたる人物。このひとは極悪人と呼ばれ、人を陰謀で殺しまくった上、王位に上るが3年にも満たない天下で死んじゃう、あっけないちょっと惨めな人物。

 

それぞれ、テーマやキャラクターの魅力というか強さが違い、面白いシェイクスピア戯曲。

 

はじまりの物語、リチャード二世は、なんというか、自身への問いかけが多い、内面に深く問い詰めていく台詞が多いんだと思う。

 

リチャード二世は、生まれながらの王として自身の存在を疑ったことがなかった。王=神の代理であり、皆、疑わず従うことが当然だと、そう思っていたように見える。

 

しかし、政治の才能もなく、頼った貴族たちも金目当ての者ばかり。財政はひっ迫、フランスとの戦争は終わらない。そうやって財力もなく兵力も衰え、その根本的な解決策を講じずにその場しのぎの対応をしていた。

それを、良しとしない貴族やらが、ボリングブルックを担ぎあげ。反乱、というよりも多勢で脅しにかかったわけだ。

 

しかし、この間、ボリングブルックは王位を譲れ、とは一言も言っていない。

リチャード二世が、その貴族たちの寝返りや、ボリングブルックの勢いに気圧されて、自分の価値を問い直してしまう。そこから徐々に「自分は王なのか」「彼のほうが王にふさわしいのではないか」「みんな私のことを必要としていないのではないか」、弱気になり、”人間”と”王(絶対的存在)”を、精神的に行ったり来たりする。

 

ヘンリー四世では、ホットスパーが感情的、というか台風の目、となって反乱軍を率いるが、この話ではボリングブルックが、若さと正論、真摯な態度で、要はカリスマ性を発揮している。

 

この劇を通して、ボリングブルックは本当に理解しにくい人物だと思う。

反乱軍を率いたのは、自分が相続するはずだった父の財産を正当に相続する権利を主張するためで、彼が感情的になる部分というのは国外追放を嘆くシーンと、叔父ヨーク公に、リチャードの行為と自分の行為の、正当性を問うシーン。

王位については、ボリングブルック自身が受け継ぎたい素振りをみせるところはない。

 

ただ、ヨーク公が”中立”という名で事実上降伏した際に、取り巻き貴族の処刑をしたシーン。あそこらへんから、実は「王」の片鱗が見え始めている。

あの時点で、ボリングブルックは自身の勝利を確信していたが、その後リチャードに接見した際、礼儀を尽くしてはいた。

あのときリチャードが、従来通りの自信と、強い心をもって対峙できていれば、攘夷の話はなかったかもしれない。

 

つまり、それまでの心理的な圧迫を、遠隔的に行っていたのあか、ボリングブルック。

陰謀とみられない、むしろまっすぐな印象を抱かせて、いる、のに。もしかして、策ではなく、天然なのか??これこそ、神の御示しの筋書きなのか???

 

でも、「ヘンリー四世」のなかでは、ヘンリー四世(=ボリングブルック)の、臨終のシーンで。自身が王位を奪ってから、結局同じように奪われる可能性があるものに恐怖を抱き、それなりに罪の意識、良心の呵責というのはあったように思う。

 

 

シェイクスピア劇は、だれを信用するか。それによって歴史が変わるし、結果が全く違っていくように思う。

リチャード二世の登場人物は、比較的優柔不断な人物が多いのかな。例えば、オーマール公は、リチャード・ボリングブルックの従弟にあたる人物だが、リチャードが、倫理に反する言動をすれば眉を顰める、かと思えば、ボリングブルックの反乱後も最後までリチャードに付き添うのも彼である。しかし、グロスター公暗殺の嫌疑をかけられるのも彼。

結局彼は、だれに仕えているのか。どんな信念をもって仕えているのか。それがはっきりしない人物であった。

 

 

歴史劇の最終章、はじまりの物語。

岡本健二さんはじめ、役者さんの個々の熱量と、技術が光り、引き込まれる作品でありました。